River

作品タイトル:River

時間の流れを象徴する川のようなインスタレーション”River”です。

2023年11月に愛知県豊田市で開催された「とよたまちなか芸術祭」に出展した本作品では、会場である豊田市職員会館の2階と3階をつなぐ階段に、川のような造形を作りました。豊田市には大きな矢作川が流れています。川の水は、上流から下流へと一方向に流れますが、この”River”は過去から未来へと流れる時間を象徴しています。

太古からある鉱物からはじまり、植物が続きます。人は自然に手を加えて物を作りました。トヨタ自動車の前身となる豊田自動織機では、綿花から糸を紡いで布を生産していました。自動車産業の初期には鉄板を職人が手作業で曲げて車体をつくるなどしていましたが、技術の発展と共に部品を組み合わせてつくる機械化が進みました。今は情報化の波です。

具体的に使用した素材は、石、枝、綿花、綿、糸、布、鋼板、鋲螺、光ファイバーの順に並べられていて、各素材がグラデーションしながら1本のラインを形づくっています。

豊田にゆかりのある物体を集めて制作したこの作品は、豊田の大きな時間の流れを表現しています。今この場所でこれを見る人の意識において、時間の長さと場所の広がりが瞬く間にスケールしてしまうような体験を目指しました。

このインスタレーションには、他の出展者の展示が行われている2階と3階を鑑賞空間として連続させるという機能があります。ホワイトキューブの中ではなく、階段という実利的な動線の中につくることは特殊ですが、既存の建物の特長とより渾然一体となったインスタレーションになりました。踊り場には腰より低い位置からの採光があり、床に並べられた作品を照らしてくれました。ワインレッドの床の上に置かれた物体は装飾となり、レッドカーペットのように来場者を大切に歓迎しているようでした。

〈作品概要〉
作品名:River
所在地:愛知県豊田市西町
設計:河部圭佑建築設計事務所
施工:河部圭佑建築設計事務所
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上3階
竣工:2023年11月
写真:トロロスタジオ